English

Tokyo Stillness
See Tokyo, differently.

Interview 2026.08.14

空と海があるだけで、東京は違って見える。 MATCHA代表・青木優さんが語る、海外旅行者に届く東京の“余白”

執筆:滝田勝紀
撮影:下城英悟

訪日観光メディア「MATCHA」を運営し、日本の魅力を海外へ発信してきた青木優さんは、海外旅行者が東京に求める価値の変化を見つめてきました。今回、青木さんは奥様とお子様とともにヒルトン東京お台場に宿泊。海外旅行者の視点を知り、訪日観光をビジネスとして見つめてきたメディア経営者が、家族とともに東京に泊まったとき、この街はどう見えたのでしょうか。お台場という場所から、東京を少し引いて眺める意味をひも解きます。

青木優(あおき・ゆう)

株式会社MATCHA 代表取締役。訪日観光メディア「MATCHA」を運営し、日本の地域、文化、食、暮らしの魅力を多言語で海外へ発信している。国内外の旅行者と地域をつなぎながら、日本の価値を世界へ届ける活動を続けている。

空と海の向こうに、見慣れない東京があった

「東京で泊まるという行為自体が、東京に住んでいると新鮮でした」

ヒルトン東京お台場での宿泊を振り返り、青木さんはまずそう語りました。東京に暮らしていると、都内のホテルに泊まる機会は意外と少ないものです。働く場所、移動する場所、誰かと会う場所としての東京は知っていても、あえて宿泊し、客室から眺め、家族と過ごす東京は、また別の表情を見せます。

最初に印象に残ったのは、お台場からの景色でした。

「ニューヨークの自由の女神があるリバティ・アイランドから、マンハッタンを眺める景色に似ているなと思いました。実際にミニ自由の女神像もありますし、アメリカの人なら、ニューヨークからの景色と重ねる人もいるかもしれません」

レインボーブリッジ越しに都心を眺める景色は、東京の中心にいるときの視界とは異なります。水辺を挟んで都市を少し引いて見る。その距離があるからこそ、東京の輪郭が立ち上がってくる。

「広い空があって、海がある。それだけで人って気分が良くなるんだなと思いました」

東京にいながら、空と海の抜け感を感じられること。青木さんはそこに、ヒルトン東京お台場ならではの魅力を見出していました。

海外旅行者は、東京を“日本を再確認する場所”として見ている

MATCHAを通じて海外旅行者の動向を見てきた青木さんによれば、近年は日本を何度も訪れるリピーターが増えています。一度目の旅では有名観光地を巡り、二度目、三度目になると、関心はより細分化し、地方へも広がっていく。

その中で東京は、単なる目的地ではなく、日本各地へ向かう旅のハブのような存在になっているといいます。

「リピーターの方も増えてきているので、東京を拠点にしながら地方へと出かけていく。東京は、定点的に観察していくような場所としても捉えられているのかなと思います」

青木さんがビジネスの視点で注目するのは、東京が“集積地”であることです。地方には、温泉、雪、食、工芸など、それぞれの土地に根ざした高純度の価値があります。一方で東京には、それらが集まり、編集され、磨き上げられていく。

「東京は人が集まっていて、文化が詰まっていて、アクセスも抜群に良い。だから日本を訪れる人からすると、東京には毎回何らかの形で立ち寄ってしまうのだと思います」

東京は旅の入口であり、出口であり、日本を再確認する場所でもある。その視点で見れば、東京に滞在する意味は、観光名所を巡ることだけではありません。

日本人の日常の“最高峰”が、海外旅行者には特別な体験になる

海外の旅行者はいま、東京に何を求めているのでしょうか。青木さんは、分かりやすい観光地だけでなく、日本人の日常に近いものへの関心が高まっているといいます。

「繰り返し来ている人は、日本の文房具を求めたり、家電を見に行ったりする。日本人が当たり前にやっていることや使っているものが、海外の人にとっては特別だったりするんです」

SNSや自動翻訳の進化により、海外の旅行者は、日本語で発信されている細かな情報にもアクセスしやすくなりました。かつてはガイドブックに載る観光情報が中心だったものが、いまでは日本人の日常の奥にある趣味やこだわりにまで届くようになっています。

青木さんが最近面白いと感じた例のひとつが、東京・蔵前にある「Lonich,/ロニック」のコーヒー体験です。ここでは、パーソナルバリスタが厳選した複数のコーヒーを一杯ずつ淹れ、その土地や品種、歴史、味わいの違いをコース仕立てで楽しむことができます。

日本人の感覚では、コーヒーを“フルコース”として味わうことに少し驚きがあるかもしれません。けれど、世界のコーヒーラバーにとっては、その高い純度や完成度こそが、東京を訪れる理由になり得る。青木さんは、そこにいまのインバウンドの変化を見ています。

「僕らにとって当たり前の文化の最高峰のもの。日本人に対してはなかなか成立しなかった高純度、高品質、高価格のものが、海外の人には刺さっているんです」

日常の中にあるものを、丁寧に磨き上げる。コーヒー、文房具、家電、食、サービス。東京には、そうした“日常の最高峰”がいくつも集まっています。海外旅行者にとって東京の面白さは、観光名所だけではなく、こうした細部に宿る完成度にもあるのです。

家族で泊まると、ホテルの安心感が見えてくる

海外旅行者が日本に惹かれる理由は、刺激や珍しさだけではありません。青木さんは、日本が世界から選ばれる背景には「安心感」や「安らぎ」があると話します。

「これだけ情報があふれ、世界的にも不安定なニュースが続く時代の中で、日本に行くとどこか安らぎを感じられる。そこが、実は日本を選んでいる理由なんじゃないかなと分析しているんです」

清潔な公共空間、正確で使いやすい交通、丁寧な接客、治安の良さ。日本人にとっては日常の一部になっている要素が、海外旅行者にとっては旅の自由度を高める大切な価値になります。

今回、青木さんがヒルトン東京お台場に家族で滞在して印象に残ったのも、そうした安心感でした。特にお子様が喜んだのはプールだったといいます。

「プールから、お台場越しに都心の街並みを見られるのが良かったです。ここが東京なんだということを忘れてしまうような感覚を味わえました」

小さなお子様との滞在では、ベビーベッドの設置、哺乳瓶への対応など、子連れならではの細かな配慮も印象に残ったそうです。また、館内にはファミリー層の宿泊客も多く、家族連れに選ばれているホテルブランドとしての信頼感も感じたといいます。

初めて東京を訪れる海外の家族にとって、ホテルは旅の不安を受け止める場所でもあります。言葉、移動、食事、子どもとの過ごしやすさ。そうした不安をやわらげることも、ヒルトン東京お台場の価値のひとつなのです。

お台場は、東京を俯瞰できる場所

青木さんは、お台場という場所について「東京を少し離れて俯瞰的に見られる場所」と表現しました。

「自分の日常を客観視できるような感じがあります。お台場は、東京で過ごす自分たちを少し離れて見ることができる場所だと思いました」

渋谷、新宿、銀座、東京駅周辺のように、都市の密度の中に身を置く東京もあります。一方で、お台場から見る東京は、海を挟んで少し距離があります。その距離は、都市から遠ざかるためのものではなく、東京を見直すためのものです。

「海と空がここまで味わえる。しかも、それを低層でも味わえるところは、他にない魅力だと思います」

取材の中で青木さんがあらためて注目したのは、お台場という土地の成り立ちでした。江戸を守るために築かれた砲台の記憶を持ち、近代以降はウォーターフロント開発の象徴となった場所。そこには、東京の過去と現在が重なっています。

「東京って海辺の街なのに、海辺の街であることをあまり発信していないですよね」

ビルに囲まれた都心にいると、東京が海辺の都市であることを忘れがちです。けれど、かつての江戸は、もっと海や川と近い場所にありました。対岸に広がる現在の都心にも、かつては海からの風が届き、人の暮らしや街の成り立ちに少なからず影響を与えていたはずです。

「その海風の気配を、いまも身体で感じられる象徴的な場所が、このお台場なのかもしれませんね」

空が開け、水面があり、橋の向こうに都市の光が見える。そこに吹く風は、単なる湾岸の風ではなく、東京が本来持っていた水辺の記憶を思い出させてくれるものでもあります。

ヒルトン東京お台場は、東京の中心へ向かうためだけのホテルではありません。東京で得た体験を、少し引いた場所から受け止めるホテルでもあります。

海外旅行者にとっては、安心して家族で過ごせる東京の拠点。日本人にとっては、見慣れた都市の美しさに気づき直す場所。そして、東京が海辺の都市であったことを、空と海と風を通じて思い出させてくれる場所。

バルコニーから空と海を眺めるだけで、東京は少し違って見えてくる。
青木さんの言葉は、私たち自身が東京の価値を再発見するためのヒントでもありました。


 
  • line

宿泊予約システム移行のお知らせ

2017年8月1日(火)より、宿泊予約オンラインシステムを変更させていただくこととなりました。つきましては、新システム移行に伴い、現在ご利用いただいておりますお客様には、大変ご不便とご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

詳しくはこちら

Page Top

sptest