English

Tokyo Stillness
See Tokyo, differently.

History, Culture & Artisans 2026.09.18

旅の記憶を、紙に残す。蔵前「カキモリ」でつくる、自分だけの東京ノート

執筆:松井直之(編集部) 写真:編集部、カキモリ提供

旅の記憶は、写真だけで残るものではありません。見た景色、歩いた道、その日に感じたことを、自分の言葉で書き留める。東京・蔵前にある文具店「カキモリ」では、表紙や紙、留め具を選びながら、自分だけのノートをつくることができます。少しずつ夜が長くなる季節に、旅を自分の言葉で振り返る。そのための一冊を、東京でつくる体験です。

蔵前へ、旅を書く一冊を探しに

ヒルトン東京お台場から東京湾を越え、東へ向かうと、浅草や隅田川に近い蔵前の街にたどり着きます。かつて玩具や革、紙などの問屋や町工場が集まったこのエリアには、今もものづくりの気配が残っています。

そんな蔵前で、海外からの旅行者にも親しまれている文具店が「カキモリ」です。店内に入ると、まず目に入るのはインクや筆記具、そして壁一面に並ぶオーダーノートのパーツ。ここでは完成品のノートを買うだけではありません。表紙を選び、紙を選び、留め具を選び、自分のための一冊を組み立てていきます。

店長によると、近年は海外からの来店客もとても多いそうです。コロナ前はアジア圏からのゲストが中心だったものの、現在は北米やヨーロッパをはじめ、さまざまな国から訪れる人が増えているといいます。SNSや口コミを通じて店を知り、旅の予定に入れて訪れる人も少なくありません。

カキモリが届けているのは、文具そのものだけではなく、「書く時間」を楽しむ体験です。旅先でノートを選ぶ。その一冊に、この先の東京を書いていく。そう考えると、ここでの買い物は、旅の記憶を残す準備でもあります。

表紙も紙も、自分で選ぶ

オーダーノートづくりは、サイズ選びから始まります。サイズはB6とB5の2種類。持ち歩きやすいB6は国内の利用者に人気があり、海外からのゲストには、たっぷり書けるB5を選ぶ人も多いそうです。

次に選ぶのは、表紙と裏表紙。レザー、布、紙など、素材も色もさまざまです。レザーは長く使える丈夫さが魅力。布や紙の表紙には、日本の織物や国内で作られた素材を使ったものもあり、季節によって少しずつラインナップが入れ替わります。そのとき訪れた季節の色や手触りを選べるのも、オーダーノートならではです。

中に入れる紙も自由に組み合わせることができます。万年筆でも書きやすい紙、ボールペンや鉛筆に合う紙、罫線、方眼、無地。絵を描きたい人は画用紙を入れてスケッチブックのように、写真やチケットを貼りたい人はクラフト紙を選んでスクラップブックのように使うこともできます。

紙が決まったら、リングや留め具を選びます。ゴム留め、ボタン留め、紐でくるりと留める封かん、角金。小さなパーツをひとつずつ合わせていくうちに、ノートの表情は少しずつ変わっていきます。

選ぶ時間は、迷う時間でもあります。けれど、その迷いこそが楽しい。色を合わせ、手触りを確かめ、何を書きたいかを想像する。ノートは、完成する前から、もう自分のものになり始めています。

選んだパーツをカウンターで注文すると、店内で製本してもらえます。空いていれば、完成まではおよそ30分。穴を開け、リングを通し、一冊のノートに仕立てられていく工程を目の前で見られるのも、この体験の楽しいところです。混み合っているときは、近隣のカフェや蔵前散策を楽しみながら待つのもよいでしょう。

旅先で、カキモリが選ばれる理由

カキモリを訪れる海外ゲストの目的は、単に日本製の文具を買うことだけではありません。自分で選び、自分で組み合わせ、自分だけのノートができあがる。その体験そのものが、旅の思い出になっています。

店内には、日本語だけでなく英語の案内も用意されています。オーダーノートの選び方も分かりやすく示されているため、初めて訪れる海外ゲストでも流れを理解しやすい。土日祝日は混み合うことが多く、事前予約の案内もありますが、平日は比較的立ち寄りやすいそうです。

ノートをつくる時間は、人によって違います。表紙や紙をじっくり選ぶ人もいれば、プレゼント用に数冊つくる人もいる。旅行の記録用に選ぶ人、仕事のアイデアを書き留める人、スケッチやコラージュのための一冊にする人。使い方に決まりはありません。

店長は、旅の思い出としてノートをつくる人も多いと話します。その日に見たものを書く。スタンプを押す。写真を貼る。チケットや小さな紙片を挟む。デジタルで簡単に記録できる時代だからこそ、手を動かして書く時間は、少し特別なものになります。

ものづくりの街に根ざす店

カキモリの魅力は、店内だけで完結していません。店では、周辺のおすすめスポットをまとめた蔵前のマップも配布しています。カキモリだけでなく、近くのカフェやショップにも足を運んでほしい。そんな思いが込められた地図が無料で配られています。

蔵前は、昔からものづくりの街として知られてきました。カキモリのノートづくりにも、近隣の町工場や素材を扱う店とのつながりが息づいています。表紙の紙を近くの工場で裁断してもらったり、向かいの革の専門問屋からレザーを仕入れたり。東京の街に残る手仕事の気配が、一冊のノートにもつながっています。

ホテルに戻って、東京を書き留める

カキモリで完成したノートは、そのまま旅の記念になります。けれど、この体験は、ノートを受け取った瞬間で終わるわけではありません。ヒルトン東京お台場へ戻り、客室のテーブルやバルコニーでノートを開く。その日に歩いた蔵前の通り、店内で迷った表紙の色、紙に触れたときの感覚、隅田川の風、帰り道に見えた東京の景色。ひとつずつ書き留めていくことで、旅はただの記録ではなく、自分の記憶になっていきます。

カキモリ

東京都台東区三筋1-6-2 小林ビル1階
オーダーノートは平日予約不要。土日祝日は混み合うため、予約優先。英語版の予約フォームもあり。使い終わったノートは、店舗で中紙の交換も可能。営業時間や予約方法、最新情報は公式サイトにて確認を。


 
  • line

宿泊予約システム移行のお知らせ

2017年8月1日(火)より、宿泊予約オンラインシステムを変更させていただくこととなりました。つきましては、新システム移行に伴い、現在ご利用いただいておりますお客様には、大変ご不便とご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

詳しくはこちら

Page Top

sptest