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Tokyo Stillness
See Tokyo, differently.

Interview 2026.06.05

東京は、少し離れると輪郭が見える。窪川勝哉が語る、ホテルを“視点”で選ぶ理由

1974年山梨県生まれ。インテリアのみならずクラフトから家電までプロダクト全般に造詣が深いインテリアスタイリスト。『エル・デコ』、『LEON』などの雑誌やTV、その他メディアでのスタイリングに加え、大手メーカーのカタログ、モデルハウスなどのスタイリングも手掛ける。家電スペシャリスト滝田勝紀氏とのユニット「inCadenza」ではインテリア視点の家電開発も行う。

執筆:滝田勝紀
写真:下城英悟

「なぜ人は、そのホテルに泊まるのか。」この連載では、各分野のプロフェッショナルたちが、訪れる都市ごとに「わざわざ選ぶ」こだわりのホテルと、その理由を紐解いていく。今回お話を伺ったのは、インテリアスタイリストの窪川勝哉氏。空間スタイリングのプロがホテルに求めているのは、豪華さでも価格でもない。そこには、都市との距離をどう取るか、日常をどう切り替えるかという明確な思想があった。そして何より重要なのは、ホテルがその都市を“どこから見るか”を決める場所でもあるということ。東京の渦中に入るのではなく、少し離れたお台場から眺めることで、見慣れた都市はまったく別の輪郭を持ちはじめる。

「マンハッタンを外から見る」ことで、都市の輪郭が見えてくる

「ニューヨークに行くとき、マンハッタンではなく、あえて対岸のブルックリン側に泊まることがあるんです」

その象徴として窪川氏が挙げたのが、ブルックリンにある「Wythe Hotel(ワイス・ホテル)」だ。元工場をリノベーションしたこのホテルは、高い天井と開放的な開口部、レトロとモダンをミックスしたインテリアデザインが印象的だが、彼が惹かれる理由はそこだけではない。

「マンハッタンの渦中にいると、実は街の姿って見えないんですよね。でも、ここのルーフトップバーからの眺めは絶景です」

摩天楼の中に身を投じれば、そのスケールはかえって感じにくくなる。視界は断片化され、都市は“部分”としてしか立ち上がってこない。しかし、川を挟んだ対岸に立つことで、街は一気に輪郭を持ちはじめる。ハドソン川越しに広がるビル群、時間とともに移ろう光。そこには、都市がひとつの“風景”として現れる瞬間がある。

窪川氏が見ているのは、単なる建築やインテリアの美しさではない。そのホテルが、都市の全体像をどう見せてくれるのか。どこに立てば、その街の本当の表情が見えてくるのか。彼にとってホテルは、そのための“視点”でもある。この視点は、東京におけるお台場の立ち位置にも重なってくる。都心に近いのに、都心そのものではない。だからこそ東京を、少し引いた場所から受け取ることができる。

ホテルは“街の全体像を知るための視点”になる

「たとえば新宿や渋谷、銀座だけを見ても、本当の東京はわかりませんよね」
 
中心地は都市の“顔”ではある。だが、それだけでは“全体像”を捉えたことにはならない。少し離れた場所に身を置いてはじめて見えてくるものがあると、窪川氏は言う。

「少し距離のある場所から中心地へ向かう道中で、住む人の生活の気配や文化のグラデーションを味わう。そうすることで、初めてその街を理解したことになると思うんです」
 
たとえばパリも、一歩中心から外れるだけで空気が変わる。そこには移民の人々の暮らしがあり、別の文化のリズムがあり、観光地の表面だけでは触れられない街の奥行きがある。
 
「その街に住む人の営みが見える場所のほうが、断然面白い。ホテルは単なる宿泊場所ではなく、その街をどこから見るかを決める“視点”でもあるんです」
 
東京もまた同じだ。ビジネスの中心地、下町、湾岸、カルチャーの集積地、そして静かな神社仏閣のある街。エリアが変われば、同じ東京とは思えないほど表情が変わる。だからこそ、“どこから東京を見るか”によって、その旅の質も大きく変わってくる。ヒルトン東京お台場のバルコニーから見える東京は、渦中の東京ではない。海と空を挟んで眺めることで、都市の密度も、光も、距離感も、ひとつの風景として立ち上がる。

非日常は“遠さ”ではなく“視点の切り替え”で生まれる

「遠くへ行く必要はないんです。大切なのは、日常がちゃんと“切り替わる”かどうか」

窪川氏にとって、非日常とは物理的な距離の問題ではない。重要なのは、精神のスイッチが切り替わるかどうか。そのための“精神的な距離”をつくれるかどうかが、ホテルの価値になる。

「すぐ戻れるけれど、ちゃんと離れている。そのバランスがいいんです」

その好例として挙げられたのが、ロンドンの「St. Pancras Renaissance Hotel(セント・パンクラス・ルネッサンス・ホテル)」だ。

「19世紀のゴシック建築のスケール感には圧倒されます。まるで別次元の世界に迷い込んだような空間ですが、すぐ隣にはユーロスターの駅があり、パリやベルギーへ即座に移動できる。日常の延長線上にありながら、一歩踏み込めば異世界という二重構造こそが、都市型ホテルの醍醐味ですね」
 
ここで窪川氏が語っているのは、単に歴史的建築の魅力ではない。都市の機能と、非日常への切り替えが、同じ場所で成立していることの面白さだ。
 
そしてこの感覚は、海外の都市だけの話ではない。東京にもまた、中心と距離を保ちながら、その都市を別の角度から見せてくれる場所がある。
 
都市の渦中に身を置くのではなく、少し離れた場所から、その輪郭や物語を見つめ直すための場所。そう考えたとき、お台場というロケーションは、東京におけるひとつの答えになりうる。近いのに、きちんと離れている。その距離が、東京を見る目を切り替えてくれる。

ホテルは“泊まる場所”ではなく、都市を見る体験装置になる

出張などの滞在中に時間の余裕があるときは、必ず「ホテルを楽しむ日」を作るという窪川氏。その時間を最大限に味わえる場所として、ニューヨークの「TWA Hotel」を挙げる。JFK空港の元ターミナルをリノベーションした、彼のお気に入りのスポットだ。

「かつてのトランスワールド航空(TWA)の施設を活かしているので、レトロフューチャーな世界観に気分が上がります。歴代の制服展示や当時のポスター。屋上プールや部屋からはひっきりなしに離着陸する飛行機を眺められ、気づけば2日くらい一歩も外に出ずに過ごせてしまう。ホテル自体が一つの完成された“体験装置”なんです」
 
また、ロンドンの「The Ned(ザ・ネッド)」も同様だという。
 
「元々ミッドランド銀行やHSBCの本社だった建物を改装して、地下の巨大金庫がバーになっています。金融の中心地にありながら、館内だけで一つのテーマパークのように完結しているんです。外に出なくても成立するほどの密度があるホテルは、やはり面白いですね」
 
ホテルは、街を探索するための拠点であると同時に、それ自体が滞在の核にもなりうる。何かを見に行くためだけではなく、そこに身を置き、時間を味わい、気分が切り替わっていくプロセスそのものがホテルの価値になる。
 
そう考えると、東京においても、海と空を前に「何もしない時間」を成立させるヒルトン東京お台場の意味は大きい。
 
都市を眺め、呼吸を整え、そのあとにどの東京へ向かうのかを考える。そんな時間を持てる場所は、観光地の真ん中よりも、むしろ少し距離を置いた場所にこそあるのかもしれない。ホテルにいる時間が、東京を見直すための余白になる。そこに、ヒルトン東京お台場ならではの視点価値がある。

ヒルトン東京お台場は、東京を“眺め直す”ための視点になる

「実はホテルとは、自分の暮らしを見直すための場所でもある」
 
ソファの座り心地やベッドの質感、窓辺から差し込む光。日常とは異なる空間に身を置くことで、自分の中にある「心地よさの基準」が静かに更新されていく。
 
なぜ人は、そのホテルに泊まるのか。それは、日常との距離を整え、視点を鮮やかに切り替えるためである。
 
都市の中にいながら、一歩引いた場所から全体を眺める。そのとき、見慣れたはずの風景はまったく違う表情を見せ始める。
 
東京もまた、多様な物語が幾重にも重なり合う都市だ。どこに身を置くかによって、その見え方は大きく変わる。その意味で、湾岸という立地は象徴的である。
 
都心に近い距離にありながら、海と空に開かれた場所から東京を俯瞰できる。そこから街へ向かうことで、自分だけの東京の物語に深く触れていくことができる。
 
ヒルトン東京お台場は、単に東京を消費するためのホテルではない。「どう東京と向き合うか」という視点を見つけるための起点になりうる場所だ。
 
非日常は、決して遠くにあるのではない。今いる場所との距離を、どう切り替えるか。その選択が、旅を変え、ひいては暮らしの見え方まで変えていくのである。東京は、近すぎると見えなくなることがある。だからこそ、少し離れて眺める時間に価値がある。ヒルトン東京お台場は、そのためのホテルであり、東京をもう一度“風景”として受け取るための視点なのだ。


 
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