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Tokyo Stillness
See Tokyo, differently.

History, Culture & Artisans 2026.07.10

なぜシティポップは東京の夜景に響くのか。Face Recordsがお台場で聴いてほしい名盤3枚をセレクト

(クレジット)
執筆:富山英三郎 撮影(店内):富山英三郎

1970〜80年代の日本で生まれ、いまや海外の音楽ファンからも熱い支持を集めるシティポップ。その都会的で洗練されたサウンドは、なぜ現代のお台場の夜景と響き合うのでしょうか。渋谷のレコードショップ「Face Records SHIBUYA」を訪ね、世界的な人気の背景や音楽的な魅力を取材。さらに、お台場の湾岸風景に似合う名盤3枚を選んでもらい、音楽とともに東京の夜を記憶に刻む旅の楽しみ方を探ります。

夜になると、ヒルトン東京お台場のバルコニーの向こうに、東京の光が浮かび上がってきます。レインボーブリッジが弧を描き、その奥には東京タワーや高層ビル群。海面に映る街の明かりを眺めていると、不思議と頭の中に流れてくる音楽があります。

欧米の音楽から影響を受けながら、1970年代後半から80年代にかけて日本で生まれた都会的で洗練された音楽、シティポップです。
 

レコード店から見える、シティポップ人気の現在地

海外でシティポップが評価されるようになってから10年以上が経ちました。今では日本の音楽ファンだけでなく、世界中の人々がレコードを求めて東京を訪れています。しかし、なぜこれほどまでにシティポップは国境を越え、時代を越えて愛され続けているのでしょうか。

その答えを探るため、渋谷・宇田川町にあるレコードショップ「Face Records SHIBUYA(渋谷店)」を訪ねました。

「海外のお客様は全体の約6割です。北米の方が多いですね。InstagramやGoogleで調べて来店される方が多く、渋谷のレコードショップ巡りの一環として立ち寄ってくださいます」。そう話すのは、ショップスタッフの猪狩功太郎さん。

Face Records SHIBUYAは、R&Bやソウル、ファンク、ジャズ、ヒップホップを中心に扱う中古レコード専門店です。1970~80年代の名盤からコアな作品まで揃い、近年は日本の良質な音楽文化を求める海外ファンにとっても重要な場所になっています。

主に欧米の名盤が揃う店内ですが、海外のお客様に特に人気なのは日本人アーティストのコーナーです。

「シティポップ人気はブームを超えて定着した印象があります。最近は、高中正義さんやカシオペアといった1980年代のフュージョン、さらには1970年代の日本のジャズを探している方も増えています」

シティポップは、都会の風景や気分を音楽にした

そもそもシティポップに明確な定義はありません。だからこそ、この音楽は時代や国境を超えて広がっていきました。

都会の高揚感、洗練されたライフスタイル、まだ見ぬ場所への憧れ、新しい時代への期待感。そうした感情を音楽にしたものがシティポップと言えるでしょう。

その背景には、1970年代後半から1980年代にかけて、日本が高度経済成長を経て成熟期へと向かっていたことが挙げられます。東京には高層ビルが立ち並び、湾岸エリアの開発が進み、高速道路が街を縫うように走り始めたのです。

当時の若者たちは、アメリカ西海岸やニューヨーク、パリ、ロンドン、地中海など、雑誌や映画の中で見た海外の都市やリゾート文化に憧れました。まだ海外旅行が特別だった時代です。異国の街並みやライフスタイルは、多くの日本人にとって「未来」そのものでした。

シティポップは、その憧れを音楽にしたものだったのです。

これまでの日本にはなかったファッション、ライフスタイル、クルマ、インテリア・・・・。音楽においては、R&Bやソウル、ファンク、A.O.R.といった海外のサウンドを吸収しながら、都市生活者のための音楽を東京でつくりあげていきました。

「音楽的にはボズ・スキャッグスやボビー・コールドウェル、スティーリー・ダンなどの影響を大きく感じます。また、山下達郎さんはカーティス・メイフィールドへのリスペクトを公言しています。そのように、シティポップはA.O.R.やソウル、ディスコなどのエッセンスを取り込みながら発展していきました」

海外の音楽に大きな影響を受けているとはいえ、シティポップは独自の魅力を放っています。その理由はどこにあるのでしょうか。

「一音一音が濃密で、時間をかけて丁寧につくられていることがわかります。コード進行もジャズやフュージョンの影響を受けた複雑なものが多い。そうした細部へのこだわりは、日本人らしさなのかもしれません」

お台場から見える夜景に寄り添う、3枚の名盤

そんなシティポップの中から、お台場の夜景に似合うアルバムを3枚選んでもらいました。

まずは杏里『Timely!!』。角松敏生がプロデュースしたこの作品は、近年ますます注目を集める存在となっています。

「お台場など湾岸エリアをドライブしながら聴きたくなる疾走感があります。クルマのライトが海面に反射するような躍動感が魅力です」

続いて山下達郎『FOR YOU』。イラストレーターである鈴木英人によるジャケットは、アメリカ西海岸への憧れを象徴する一枚としても有名です。

「都会的なソウルファンクの要素が詰まっていて、ヒルトン東京お台場から見える夜景はもちろん、昼の心地良い時間帯にもよく合います。シティポップを代表する一枚としても知られています」

そして3枚目が佐藤博『Awaking』。波の音で始まる、ゆったりとしたこの作品は今回のテーマに最も近いアルバムかもしれません。

「その日の旅の出来事を振り返りながら、夜景を眺めてゆっくりお酒を楽しむ。そんな時間にぴったりです」

アートワークは佐藤博自身が手がけており、飾っておくだけでも絵になる美しさがあります。

色褪せない東京の記憶を閉じ込めたタイムカプセル

Face Recordsがセレクトしてくれた3枚は、どれも発売から40年以上が経過しています。それでも世界中の人がこれらのレコードを探し続けるのは、懐かしさを感じたいからではありません。シティポップには、明るい未来へ向かうエネルギーが詰まっているのです。80年代を思わせるノスタルジーと、近未来的でポジティブな感覚。その両方が共存しているのです。

「都会の高揚感や街に飛び込む没入感は、今の東京の夜景とも重なります」

猪狩さんの言葉に、大きくうなずきたくなりました。確かに1980年代と現在の東京の風景は同じではありません。当時はまだレインボーブリッジもありませんでした。しかし、お台場から見える景色には、あの時代の人たちが夢見た未来が今も残っています。

夜の海の向こうに広がる光
空へ伸びる高層ビル
絶えず動き続ける都市のエネルギー

その風景は、シティポップが描いてきた世界と不思議なほど響き合います。

渋谷でお気に入りのレコードを探し、ヒルトン東京お台場へと戻る。ほっと一息ついて、バルコニーに出て東京の夜景を眺めながらシティポップの名盤を、ポータブルレコードプレーヤーなどで聴く。旅という非日常の途中で感じた高揚感や街の空気が、音楽とともに蘇ることでしょう。

そして、その記憶は帰国後も続いていきます。家に帰りそのレコードに針を落としたとき、思い出すのは洗練されたビートや爽快なメロディだけではありません。ヒルトン東京お台場のバルコニーから見たレインボーブリッジの光、海面に映る都市の煌めき。そして東京で過ごした特別な時間です。

シティポップは音楽であると同時に、東京という都市の記憶を閉じ込めたタイムカプセルなのかもしれません。ヒルトン東京お台場の客室やバルコニーから見える風景には、その記憶と響き合う何かがあります。

レコードを一枚持ち帰ることは、音楽を持ち帰ることではありません。東京で過ごした特別な時間を持ち帰ることなのです。

Face Records SHIBUYA

営業時間:13:00〜19:00
TEL:03-3462-5696


 
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